相続財産に借金がある場合~相続放棄と限定承認の違い~
相続財産には、被相続人の有する全ての財産・権利・義務が含まれているため、被相続人が負っていた借金も、相続財産として相続されることになります。もっとも、自身が負ったわけではない借金を負わされ、返済に追われたくはないと思うのが通常でしょう。
このような場合には、「相続放棄」または「限定承認」という手段を採ることが考えられます。
■相続放棄とは?
「相続放棄」とは、被相続人(亡くなられた方)の遺産や借金を相続する権利を放棄することをいい、被相続人の借金や負債が遺産の金額を上回る場合などに行われます。相続放棄を行った人は最初から相続人ではなかったものとして扱われ、それ以外の相続人により財産が分配されることになります。
相続放棄をする場合は、単に相続放棄をする旨の意思表示をするのみでは成立せず、被相続人の住居の住所を管轄する家庭裁判所に申立てることが必要となります。
■限定承認とは?
「限定承認」とは、相続した遺産の中から債権者に借金を返し、残金があったら受け取ることができる手続きです。相続により取得したプラスの財産額を上限として、相続により負うこととなったマイナスの財産を負担することができます。
限定承認をすると、相続の放棄と違い、相続人は被相続人の一切の相続財産を承継します。
一般的に、相続財産の総額よりも借金額の方が大きい場合には、相続放棄によって解決することが多いですが、相続したい財産と相続したくない財産が混在する場合には、限定承認が採られることがあります。
■相続放棄と限定承認の違い
相続放棄と限定承認の手続きには、以下のような違いがあります。
相続の放棄は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に、必要な書類を添付した相続放棄の申述書を提出します。
この申述は相続人全員で行う必要はなく、1人だけで相続の放棄を行うこともできます。
限定承認は、相続財産の目録の作成が必要となり、被相続人最後の住所地の家庭裁判所に必要な添付書類を付した申述書とともに提出します。
この申述は、相続放棄と異なり、相続人全員で行う必要があります。
また、申し立て後、相続財産に対して債権を持つ人(相続債権者)や遺贈を受け取る予定の人(受遺者)に対して、5日以内に「2ヶ月以内に借金などの請求の申し出てください」と官報に公示しなければいけません。同時に、相続人が知っている相続債権者や受遺者に対して個別の催告も必要となります。
もっとも、相続放棄や限定承認を希望する相続人は、どちらも被相続人の死亡を知った時から3か月以内に家庭裁判所にて行わなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、特別な事情や期限延長の申し立てがあった場合を除いて、被相続人から相続した借金を相続人が返済しなければなりません。
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福井弁護士会(登録番号50544)河野 哲(こおの さとる)
官公庁及び上場企業での勤務経験があり、企業勤務時に使命感を抱き弁護士を志した異色の弁護士です。既成概念にとらわれない柔軟な発想と「弁護士はサービス業」というご依頼者様目線の業務を心掛けています。
経歴
- 京都大学水産学科、京都大学ロースクール卒。
- リクルート、京都市役所、日本輸送機(現三菱ロジスネクスト)などでの勤務を経て、2014年弁護士登録。
- 奈良県の法律事務所、福井県のさいわい法律事務所を経て、二の宮法律事務所設立。
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