配偶者居住権とは?利用するメリット・デメリットは?
■ 配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、夫婦の一方がなくなった時、残された配偶者が、亡くなった被相続人の所有する建物に原則亡くなるまで無償で住むことができるという権利のことです。これは、平成30年7月に民法の相続分野の改正を受けて、令和2年4月1日に施行された規定になります(民法1028条〜1036条)。
■ 配偶者居住権の成立要件
配偶者居住権が成立するためには、3つの要件があります。
⑴ 被相続人(亡くなった人)の配偶者であること
⑵ 配偶者が、被相続人の所有していた建物に、被相続人が亡くなった時に居住していたこと
⑶ 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判によって取得したこと
これらを全て満たすことが必要になります。
■ 配偶者居住権のメリット、デメリット
● メリット
⑴ 建物を所有する配偶者が亡くなっても、変わらずその建物に居住し続けることができる。
通常、相続が発生しますと、被相続人の財産すべてが相続人に受け継がれます。
仮に夫婦間に子どもがいた時、亡くなった配偶者が建物を所有していたとすればその建物の所有権は残された配偶者に相続されることが多いです。
しかし、子どもにも相続権がある以上、建物の所有権について争いを生じさせることもあります。そこで、配偶者居住権を行使すれば、残された配偶者は建物から追い出されることなく住み続けることを法的に守られるというメリットを有しています。
⑵ 財産の取り分が減らないので、生活費などに困らない。
民法900条では相続での割合を定めています(特別な遺言がない場合の規定です)。
例えば、夫婦間に子どもが1人の時、夫が亡くなった場合、夫の所有する財産が、不動産2000万円、現金3000万円を相続財産としたケースですと、改正前民法では、不動産の所有権(2000万円)を妻が相続した時に、民法900条1号の規定を受けると、相続分は妻と子で2分の1ずつになるので、妻は現金を500万円しか相続できないことになってしまいます。
これを改正相続法で新設された配偶者居住権を行使することによって、所有権と居住権を分けることができるので、子どもらに不動産の所有権(1000万円)、妻に居住権(1000万円)を相続すると、妻と子で現金を1500万円ずつ受け取ることができるようになります。
● デメリット
⑴ 配偶者居住権は所有権ではないこと。
あくまでも居住権なので、勝手に家を売ることなどができないという点に注意が必要です。
これらをしたい時は、所有権者に相談をする必要があります。
⑵ 配偶者居住権は譲渡できないこと。
民法1032条2項に示されているとおり、この権利は法律婚の配偶者のみに適用される一身専属権となっています。
したがって、配偶者以外の第三者にこの権利を譲渡することはできません。
■ 配偶者居住権の問題点
配偶者居住権を利用する上で、上記に挙げたメリット、デメリット以外に制度上の問題点も存在します。
特に指摘されるのが、被相続人が建物を第三者と共有していた場合に、配偶者居住権は利用できないこと(民法1028条但書)、民法1033条における必要な修繕の判断基準が難しいことなどが挙げられます。
二の宮法律事務所は、福井市二の宮を中心に、坂井市、あわら市、大野市、鯖江市、越前市、石川県加賀市、小松市にお住まいの方からのご相談を承っております。相続に関する配偶者居住権を利用する上で発生する問題解決に幅広く対応しております。
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福井弁護士会(登録番号50544)河野 哲(こおの さとる)
官公庁及び上場企業での勤務経験があり、企業勤務時に使命感を抱き弁護士を志した異色の弁護士です。既成概念にとらわれない柔軟な発想と「弁護士はサービス業」というご依頼者様目線の業務を心掛けています。
経歴
- 京都大学水産学科、京都大学ロースクール卒。
- リクルート、京都市役所、日本輸送機(現三菱ロジスネクスト)などでの勤務を経て、2014年弁護士登録。
- 奈良県の法律事務所、福井県のさいわい法律事務所を経て、二の宮法律事務所設立。
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