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器物損壊で罪に問われるのはどんなケース?

器物損壊とは、他人の器物を壊したり、使用不能の状態にしたりすることを指します。

例えば、他人の車のタイヤに穴をあける、窓ガラスを割るなどが典型的なものとして挙げられます。

本稿では、「何が器物損壊にあたるのか」について、法的な観点から解説します。

ぜひ最後までお読みください。

器物損壊罪とは

刑法は、犯罪行為の成立要件を明確に定めています。

そこで、どのような場合に器物損壊罪が成立するのか知るためには、器物損壊罪の構成要件が刑法本文において、どのように定められているのかを確認する必要があります。

刑法第二百六十一条によれば、器物破損は、前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する、と定められています。

このように、刑法上の器物損壊罪は、「他人の物を損壊」または「損傷」する行為と定義されています。

一見、「他人の物を壊してはいけない」とだけ規定された単純な条文に見えますが、法律的には様々なポイントがあるため、説明が必要です。

次に、これらの要件の法的な意味について詳しく説明します。

 

「物」とは

刑法第二百六十一条で定められている「物」とは、文書と建物以外の財産を指します。

さらに、「他人の」というのは、自分の所有物を壊しても罪に問われないという意味を表しています。

一見、当たり前のようにも思えますが、刑法第262条では、「差し押さえ」や「貸与」された財産は、たとえ「自分の財産」であっても破棄することが禁止されていることから、注意が必要になります。

 

「損壊」または「傷害」とは

次に、「損壊」と「傷害」の指す意味について説明します。

まず「損壊」とは、「物の効用を損なう一切の行為」を指します。

これは、物を壊したり、汚したり、使えなくするような行為が含まれます。

車を例にとると、タイヤをパンクさせる行為は、タイヤが損傷し通常の走行が不可能になることから、「損壊」にあたります。

これが、パンクではなくタイヤの空気が抜けていただけの場合、タイヤに空気を入れ直せば再び使用できることから、「損壊」ではないという主張がなされることがあります。

重要なのは、タイヤが簡単に元の状態に戻せるかどうかという点になります。

 

さらに、「破損」には、心理的な意味で物体を使用不能にすることも含まれます。

例えば、物が汚れたとき、洗って物理的にきれいになっても、通常の意味で使えなくなれば「破損」とみなされます。

有名な事例として、「飲食店で食器等に放尿した事例で器物損壊罪の成立が認められた」というものがあります。

排尿されても物理的な損傷はなく、洗えば再利用も不可能ではありません。

しかし、通常飲食に使用する食器に排尿されたことで、心理的な観点から食器として使用できなくなった、効用を失ったと考えるべきという判断に基づき、器物損壊罪の成立が認められました。

 

次に、「傷害」とは、動物を傷つけることであり、対象が動物であることのみで用語が使い分けられています。

 

器物損壊罪が成立しないケース

では逆に、器物損壊罪が成立しないケースはどのようなものがあるのでしょうか。

器物損壊罪が成立するためには、他人の物を損壊・傷害する認識が必要になります。

これは、不注意やミスにより他人の物を壊したケースは器物損壊罪に該当しないこととなります。

具体的な事例としては、うっかり店の食器を床に落とし割ってしまった、14歳未満の子供が他の家の窓を割ってしまった、などもこれに当たります。

 

しかし、例外も存在しています。

例えば、泥酔状態で本人が覚えていない場合などは、故意は否定されず器物損壊罪に該当することとなります。

また、故意が認められず犯罪が成立しなかった場合にも、民事上の損害賠償責任は負わなければならないため、壊した物を弁償する必要があります。

 

器物損壊罪で起訴されることはあるか

それでは、器物損壊罪で起訴されることはあるのでしょうか。

刑法によれば、器物損壊罪は「親告罪」に当たるとされています。

この「親告罪」は、告訴がなければ公訴を提起することができないと定められています。

また「告訴」とは、被害者が犯罪の事実を警察や検察に報告し、加害者の訴追を求める意思表示のことを指し、「公訴提起」とは、検察官が裁判所に対して犯人の処罰を求める訴えを提起すること、起訴を指します。

 

つまり、器物損壊罪においては、被害者が「告訴」しない限り起訴されることはありません。

これは、器物損壊による被害は所有物の破壊に限られることから、被害者に賠償金を支払うことで問題は解決するといえます。

 

しかし、ここで注意しなければならないのが、「被害届」の提出です。

「被害届」は、法律で定められた厳格な手続きである「告訴状」に対し、被害者が警察に通報した際に警察官が聞き取った内容を書き留めた実務的な記録になります。

従って、被害届を提出しただけの段階では告訴状の要件を満たしておらず、起訴されることはありません。

しかし、警察は、犯罪として被害届を受理した以上、刑事事件として捜査を開始し、犯人を取り調べたり、場合によっては逮捕したりすることもあります。

つまり、その後の捜査の展開によっては、告訴され起訴される可能性もあります。

このような事態を避けるためには、被害者との間で示談を成立させることが有効です。

被害者が告訴しないことに同意すれば、器物損壊罪で起訴される可能性はなくなります。

 

刑事事件は二の宮法律事務所におまかせください

器物損壊罪は、故意に他人の器物を損壊・傷害した場合に成立する犯罪です。

親告罪であることや、法定刑が比較的軽いことから、軽い犯罪であると思われがちですが、中には起訴・逮捕・起訴される可能性もあります。

早期に弁護士に相談し、対応を依頼する必要があるといえます。

刑事事件でお悩みの際には二の宮法律事務所までお気軽にご相談ください。

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Lawyer弁護士紹介

河野 哲(こおの さとる)

福井弁護士会(登録番号50544)河野 哲(こおの さとる)

官公庁及び上場企業での勤務経験があり、企業勤務時に使命感を抱き弁護士を志した異色の弁護士です。既成概念にとらわれない柔軟な発想と「弁護士はサービス業」というご依頼者様目線の業務を心掛けています。

経歴

  • 京都大学水産学科、京都大学ロースクール卒。
  • リクルート、京都市役所、日本輸送機(現三菱ロジスネクスト)などでの勤務を経て、2014年弁護士登録。
  • 奈良県の法律事務所、福井県のさいわい法律事務所を経て、二の宮法律事務所設立。

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