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生前の貢献で相続分が増える?「寄与分」について詳しく解説

相続に関連する 1つの制度に「寄与分」というものがあります。これは生前特別の貢献をしてきた方に対して相続分の増加を認めるものであり、被相続人の介護に献身的に対応してきたという方はチェックしておきたい制度でもあります。

 

本記事では、寄与分が認められるための条件や具体例などを解説していますので、ぜひご一読ください。

「寄与分」で相続分が増える

相続における「寄与分」とは、被相続人に対する生前の貢献を評価し、相続人に本来の相続分に加えて追加で相続分を認める制度のことです。

 

この制度は、相続人間の公平を保つために設けられており、被相続人の財産に対する特別な貢献を適切に評価し、反映させることを目的としています。

 

結果として、寄与分が認められると該当する相続人の相続分が増加します。
ただし、相続分が増加するには、後述するようにさまざまな要件を満たさなくてはなりません。実際のところこれを認めてもらうのは簡単ではありませんが、長年にわたり大きく貢献してきたという方は弁護士に相談するなどしてその有無を一度見てもらうと良いでしょう。

寄与分の算定方法

寄与分が発生する場合の相続分は、次のように算定します。

 

  1. 特別な貢献に対する評価
    • 行為の内容や期間、程度などを総合的に評価して金額に換算する。
  2. 相続財産の総額から寄与分を控除
    • 各相続分に分配する前に、寄与分を相続財産の総額から差し引いておく。
  3. 残余財産を分配
    • 控除後の相続財産を法定相続分で分配する。
  4. 寄与分を加算
    • 寄与分が認められた相続人にのみその金額を加算する。

 

算定は複雑で、多くの要素を考慮する必要がありますので、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることをおすすめします。

寄与分が認められるための要件

寄与分を認めてもらうには、いくつかの要件をクリアしないといけません。以下では、その各要件について詳しく説明していきます。

相続人であること

寄与分を主張できるのは相続人のみです。

 

相続人とは、亡くなった方の配偶者や子、父母、兄弟姉妹などの法定相続人を指します。

 

ただし、 2019年の改正民法によって相続人以外の親族にも一定の条件下で寄与分相当を認める「特別寄与料」という制度が導入されました。
この制度は、例えば被相続人の子の配偶者などが長年にわたり介護を行った場合などに適用され、相続人でない親族であってもその貢献が適切に評価されるようになっています。

無償での継続的な協力

ある協力が“無償”で行われていることも重要です。

 

そのため対価を得て支援していた場合には寄与分の対象とはなりません。

 

また、この協力は一時的なものではなく、ある程度“継続的”に行われていることも求められます。具体的な期間については法律上明確な規定はありませんが、一般的には数年以上の期間が必要と考えられています。
ただし、期間の長さだけでなく、その間の貢献の質や程度も重要な判断要素となります。例えば、短期間であっても非常に負担の大きな、献身的な介護を行った場合なども、状況によっては認められることがあります。

一般的な協力義務を超える特別な貢献をした

寄与分の認定にあたっては、単なる協力ではなく、“一般的な親族に求められている協力義務の範囲を超える、特別な貢献”が必要とされています。

 

これは「特別寄与」と呼ばれ、寄与分の有無を判定するうえで特に重要な核心的要素といえます。

 

例えば、子が親の面倒を見るのは一般的に期待されることであり、傍から見て特別な行為があったといえないような場合だと仮に面倒を見ていたとしても認められない可能性があります。
子であるということを踏まえても、特に献身的な行為があったと評価されることで特別寄与が認められるのです。

被相続人の財産の維持・増加に寄与した

ある行為が“財産の維持や増加に関与する行為”であることも求められます。

 

つまり、特別な貢献をしただけでなく、その貢献が財産に具体的な影響を与えたかどうかも見られるのです。

 

財産の維持とは、“財産の減少を防いだこと”を指し、例えば被相続人の所有する不動産の価値が下がらないように適切に管理するなどの行為が該当し得ます。
一方、財産の増加とは、“財産を積極的に増やしたこと”を指し、例えば被相続人の事業に従事してその収益を大きく伸ばしたり資産運用を手伝って利益を上げたりすることが該当し得ます。

 

このように、単に努力したというだけでなく、その努力が実際に財産に反映されているかどうかが認定に大きく関わってきます。

遺産分割協議等での主張が必要

寄与分は自動的に認められるものではありません。

 

そもそも財産の相続自体、相続人間の話し合いにより進めるものですので、その場で寄与分が存在していることを主張しないと誰も認識しないまま手続きが進むことも考えられますし、寄与分を考慮した遺産分割をしたいのならその方自身で主張しないと相続分の増加は見込めません。

 

とはいえ寄与分を主張したとしても希望通りに相続分が増やせるとも限りません。その認定自体線引きが難しいうえ、計算についても個別に考えていかないといけません。
トラブルが起こるリスクもあり、親族間で揉める可能性が高まります。この点に心配がある方は弁護士にご相談ください。

 

なお、寄与分の主張は、遺産分割協議のほか遺産分割調停や遺産分割審判などの場でも可能です。

寄与分が発生する具体例

実際に寄与分が認められるケースは限られており簡単には認められないのが現状です。他方、以下の各パターンとその具体例に該当するケースであれば、相続分の増加も見込めます。

 

行為の類型

具体例

事業従事型

「家業の農業を 20年以上無報酬で手伝って収益を倍増させた」

「被相続人の個人商店で、 10年以上無給で働き売上を大幅に伸ばした」

「会社経営を 15年間無報酬でサポートし、経営危機を乗り越えた」

など

財産管理型

「被相続人所有の賃貸アパートを 10年間無償で管理し、空室率を低下させた」

「土地売却に際し、占有者との立退き交渉や契約締結を行い、高値で売却した」

「不動産の固定資産税や火災保険料を長年負担し続けた」

など

療養看護型

「要介護 5の被相続人を 5年間自宅で介護し、施設入所費用を節約した」

「認知症の被相続人を 3年間献身的に介護し、 13食の世話と排泄介助を行った」

「末期がんの被相続人を 2年間在宅で看取り、高額な入院費用を抑えた」

など

金銭出資型

「被相続人の事業拡大のため、 1,000万円を無利子で融資した」

「住宅ローン 5,000万円の連帯保証人となり、返済を肩代わりした」

「不動産を無償で 10年間使用させ、家賃収入相当額を節約させた」

など

扶養型

「生活保護基準を上回る額の仕送りを 4年間継続して行った」

「被相続人と同居し、 20年間の生活費を負担し続けた」

「他にも相続人がいる中、 1人で施設入所費用を 10年間支払い続けた」

など

 認められにくい例

一方で、以下のような例に該当するケースでは認められにくい傾向にあります。

 

行為の例

認められない理由・根拠

「同居しながら日常的な家事やお世話をしていた」

同居親族間の通常の協力義務の範囲内とみなされる可能性が高いため。

「短期間(数ヶ月程度)、介護や看護をしていた」

行為の継続性が不十分とみられる可能性があるため。

「報酬や対価を受け取っていた」

無償の貢献ではないため。

「資産運用のアドバイスをしていた」

特別な寄与とは認められにくく、かえってリスクを伴う行為とされる可能性もあるため。

 

単なる日常的な協力や短期間の貢献では不十分です。その貢献が特別であり、長期間にわたって継続的に行われ、かつ財産の維持・増加も求められます。
また、主張にあたっては証拠も必要となるでしょう。他の相続人が主張を受け入れてくれないときは、貢献の事実を客観的に示す記録や資料などを提示する必要があります。対応に悩むときはお早めに弁護士へご相談ください。

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Lawyer弁護士紹介

河野 哲(こおの さとる)

福井弁護士会(登録番号50544)河野 哲(こおの さとる)

官公庁及び上場企業での勤務経験があり、企業勤務時に使命感を抱き弁護士を志した異色の弁護士です。既成概念にとらわれない柔軟な発想と「弁護士はサービス業」というご依頼者様目線の業務を心掛けています。

経歴

  • 京都大学水産学科、京都大学ロースクール卒。
  • リクルート、京都市役所、日本輸送機(現三菱ロジスネクスト)などでの勤務を経て、2014年弁護士登録。
  • 奈良県の法律事務所、福井県のさいわい法律事務所を経て、二の宮法律事務所設立。

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