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相続人が認知症だったら相続手続きはどのように進めるべき?

認知症の患者数が増加している昨今、大きな問題として挙げられるものが相続の問題です。

夫が亡くなって妻と子に財産が残された場合に、妻か子の一方が認知症であると、遺産分割協議が円滑に進まない恐れがあります。

この記事では、相続人に認知症患者がいる場合の相続手続きについて解説します。

遺産分割協議は相続人全員の参加と同意が原則

相続人に認知症の方がいる場合、相続人だけで遺産分割協議を行うことができない危険があります。

遺産分割協議を行うには以下2点が必要とされているからです。

 

  • 遺産分割協議には当事者である相続人全員の参加が必要である
  • 相続人全員が判断能力を有している必要がある

 

1点目は1人でも参加していない相続人がいた場合、その欠員のゆえに遺産分割協議は無効となりかねないということです。

 

2点目は、遺産分割協議に参加した相続人の判断能力に不十分な点がある場合、やはり、その判断能力の不十分ゆえに遺産分割協議は無効となりかねないということです。

判断能力が不十分となりかねない例が、未成年者や認知症です。

未成年者の場合は、相続人ではない法定代理人や裁判所が定める特別代理人が、未成年者に代わって参加せねばならないこととなります。

認知症の場合は、認知症の全てが判断能力不十分となるわけではありませんが、判断能力不十分となる場合には、成年後見人が、認知症の方に代わって参加せねばならないこととなります。

成年後見人の申立手続きについて

成年後見人とは、認知症や記憶障害によって判断能力が低下してしまった本人(被後見人)に代わって本人のための法律行為をする権限(代理権)を付与された者のことです。

成年後見人が、この代理権に基づいて、認知症の相続人に代わって遺産分割協議に参加することで、遺産分割協議の進行が可能となるのです。

 

成年後見人には、本人が判断能力を有している間に当事者である本人自身が選任する「任意後見人」と、判断能力が無くなった後に裁判所によって選任される「法定後見人」があります。

ここでは法定後見人の選任について解説します。

法定後見人の仕事が開始できるまでの申立て手続きの流れは以下の通りです。

 

  1. 申立人・申立先を確認する
  2. 診断書を取得する
  3. 必要書類を収集する
  4. 申立書類を作成する
  5. 面接日を予約する
  6. 家庭裁判所へ申立てをする
  7. 審理開始と審判
  8. 後見の登記完了と後見人の仕事開始

認知症の相続人がいる場合の事前対策

相続人となるべき家族のなかに認知症の方がいる場合には、被相続人が存命中に対策すれば、相続発生時に成年後見人の選任などの手続きリスクを軽減することも期待できます。

生前対策として挙げられるのは以下の3つです。

遺言書作成

遺言書に相続内容を明記すれば、遺産分割協議なしで金品や不動産などの財産相続の手続きができます。

特に相続の内容について、被相続人自身の具体的な希望がある際にはおすすめです。

生前贈与

生前に財産を子どもなど家族に贈与すれば、その財産についでの遺産分割協議は避けることができます。

ただし、贈与税・相続税などの税金面への影響についての十分な事前検討が望まれます。

家族信託

家族信託とは、生前に信頼ができる家族に財産管理を任せる方法です。

相続人の認知症はもちろん、被相続人が認知症になった場合の資産凍結予防策としても活用が可能です。

まとめ

相続人のなかに認知症の方がいる場合は相続の発生前に対策しないと、相続発生後に、他の相続人に対し、成年後見人選任申立などの大きな負担や問題を残してしまう可能性があります。

遺産分割協議に加えて、成年後見人選任までせねばならないとなると、遺産分割協議が整うまで相応の時間を要することが予想されます。

しかし、相続税申告の義務がある場合には、遺産分割協議が整うか否かに関わらず、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税申告をせねばなりませんので、期限までに遺産分割協議が整っていない場合には法定相続分による申告(いわゆる「仮の申告」)をせざるを得なくなってしまったりもします。

相続についてご不明な点がある場合には、まずは弁護士へ気軽にご相談ください。

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Lawyer弁護士紹介

河野 哲(こおの さとる)

福井弁護士会(登録番号50544)河野 哲(こおの さとる)

官公庁及び上場企業での勤務経験があり、企業勤務時に使命感を抱き弁護士を志した異色の弁護士です。既成概念にとらわれない柔軟な発想と「弁護士はサービス業」というご依頼者様目線の業務を心掛けています。

経歴

  • 京都大学水産学科、京都大学ロースクール卒。
  • リクルート、京都市役所、日本輸送機(現三菱ロジスネクスト)などでの勤務を経て、2014年弁護士登録。
  • 奈良県の法律事務所、福井県のさいわい法律事務所を経て、二の宮法律事務所設立。

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