【徹底解説】相続人に未成年がいる場合の相続における注意すべきポイント
「遺産相続において相続人の中に未成年者がいる場合、特別な手続きが必要なのか?」という悩みを持っている方がおられます。
相続人に未成年者が含まれている場合と相続人がすべて成人の場合とは、遺産分割協議における物事の扱い方が違うので注意が必要です。
本記事では相続人に未成年者がいる場合に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
未成年の子どもが相続人となる可能性があるという方は、この記事を参考にしてください。
未成年者は相続人になれる?それともなれない?
答えを先に述べれば、未成年者でも成人と同様に相続人になれます。
相続人が複数いる場合、相続人すべてで遺産分割協議をおこない、決定事項を遺産分割協議書として作成しなければなりません。
しかし、民法では未成年者は法律行為ができないとされています。そして遺産分割協議は法律行為に該当します。
したがって、遺産分割協議では未成年者に代わり務めを果たす法定代理人が必要です。
未成年とは何歳まで?
民法改正により2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳になりました。したがって、未成年とは0歳から17歳までの人を指します。
民法が定めている成年年齢は「一人で契約をすることができる年齢」という意味と「父母の真剣に服さなくなる年齢」という意味です。
こうした理由から、成年年齢に達していない未成年は自分で法律行為や契約などができません。したがって、法定代理人が必要となります。
相続人に未成年者が含まれているケースで注意すべきポイント
相続人に未成年者が含まれているケースでは、遺産分割協議に際し法定代理人が必要です。
したがって、相続人に未成年者が含まれている場合、次の点に注意してください。
- 原則として未成年者の法定代理人は親
- 親が未成年の子どもと共に相続人である場合、特別代理人が必要
原則として未成年者の法定代理人は親
原則として未成年者の法定代理人は親です。したがって未成年者が相続人に含まれる遺産分割協議においては親が子どもの法定代理人を務めます。
しかし、次に詳しく説明するように、一部のケースでは親が未成年の子どもの法定代理人を務めることができないケースがあるので、その点には注意してください。
一例として、次の条件すべてが当てはまるケースでは、親が未成年の子どもの法定代理人になれます。
- 祖父が死亡しその遺産を孫である未成年の子どもが相続する
- 祖母は祖父より前に死亡
- 相続人となる未成年の子どもの父親も祖父より前に死亡
- 相続人となる未成年の子どもの母親は相続人ではない
まとめると、親が相続人でないなら、遺産分割協議の際に親は未成年の子どもの法定代理人になれます。
親が未成年の子どもと共に相続人である場合、特別代理人が必要
遺産分割協議において、親が子どもと共に相続人である場合、親は子どもの法定代理人にはなれません。
父親が死亡し、その遺産を配偶者である母親と子どもが相続するといった場合です。
その場合、親は特別代理人を立てる必要があります。
親と未成年の子どもがともに相続人の場合、親が法定代理人になれない理由は、「利益相反」です。
利益相反とは、当事者間の行為が一方の立場では利益になるものの、他の立場では不利益になることを意味します。
このケースで親が未成年の子どもの法定代理人を務めれば、親の立場として自分の取り分を増やし、子どもの取り分を減らすことが可能です。
ですから、法定代理人としての地位が要求する義務を果たすのが困難になることが予想されます。
したがって、親が未成年の子どもと一緒に相続人となるケースでは、親は子どもの法定代理人にはなれません。法定代理人を立てる必要があるわけです。
特別代理人を立てる方法
特別代理人を立てるには、未成年者の住所地を管轄している家庭裁判所で申し立てをしなければなりません。
親権者もしくは利害関係人(親権者と未成年者以外の相続人)が申立人になれます。
申し立てに必要な書類は以下の通りです。
- 特別代理人選任申立書
- 相続人である未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 親権者もしくは未成年者後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 特別代理人候補者の住民票もしくは戸籍附票
- 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案・契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書など)
- 利害関係を示す資料としての戸籍謄本など(利害関係人が申立人の場合)
特別代理人候補者は成人の親族から選ぶことが可能です。特別代理人になるために弁護士などの資格は必要ではありません。
親族にふさわしい人がいないなら、弁護士や司法書士などの専門家に特別代理人を依頼できます。
家庭裁判所は、特別代理人候補について未成年者との関係や利害関係の有無などを考慮し、適格性を判断します。
家庭裁判所から特別代理人として選任され、審判で決められた行為が終了すれば、特別代理人としての任務は終了です。
未成年者の相続人が複数いる場合は特別代理人も複数必要
相続人の中に未成年の子どもが複数含まれており、親が法定代理人を務めることができない場合があります。
このケースでは、特別代理人が相続人でかつ未成年の子どもの人数と同じ数だけ必要です。
まとめ
この記事では未成年者が相続人に含まれているケースで注意すべきポイントを紹介しました。
未成年者でも相続人になれます。しかし遺産分割協議という法律行為はおこなえないので、以下の点に注意が必要です。
- 原則として未成年者の法定代理人は親
- 親が未成年の子どもと一緒に相続人である場合、特別代理人が必要
- 複数の未成年の子どもが相続人の場合、その人数に合わせた数の特別代理人が必要
未成年者が相続人に含まれているなら手続きが難しくなると感じる方がいらっしゃいます。
遺産分割協議などを含めた相続について質問や悩みがあれば、専門家である弁護士に相談してください。
法律についての知識とこれまでの経験を駆使して最善のアドバイスをしてくれるでしょう。
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福井弁護士会(登録番号50544)河野 哲(こおの さとる)
官公庁及び上場企業での勤務経験があり、企業勤務時に使命感を抱き弁護士を志した異色の弁護士です。既成概念にとらわれない柔軟な発想と「弁護士はサービス業」というご依頼者様目線の業務を心掛けています。
経歴
- 京都大学水産学科、京都大学ロースクール卒。
- リクルート、京都市役所、日本輸送機(現三菱ロジスネクスト)などでの勤務を経て、2014年弁護士登録。
- 奈良県の法律事務所、福井県のさいわい法律事務所を経て、二の宮法律事務所設立。
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